Outline of Annual Research Achievements |
近年, 核家族化や共働き世帯の増加から, 小学生等の低年齢の子供の留守番が増加している. 留守番時の子供の安全確保は, 両親にとって大きな課題である. 小学生等に留守番をさせる場合, 両親がいない不安から情緒の安定を欠くことや, 日が暮れて暗くなる時刻に, 子供は不安を抱き情緒が不安定になる場合も多い. 情緒の安定を欠いた子供は, 低年齢の場合, 自分から両親に電話をかけるなどの行動が難しいこともあり, 両親は子供の情緒の安定性を確認したいと考えている. このように子供の安全を考慮する上で, 子供の情緒の安定は大きな要素であり, 留守番時の子供の心理状態の把握は, いち早くストレスを検出し, 高いストレス状態を緩和するために重要である. また, 対象が子供であるため, ストレスを検出する条件として, 非拘束・非接触で測定可能であることは, 重要な要素である. 皮膚表面温度は, 非拘束・非接触という測定条件を満たし, 比較的安易に測定が可能なことから, 留守番時の子供のストレス検出法として適していると考えられる. ヒトの皮膚表面温度は, 様々な要因によって変化するが, 成人については顔面の皮膚表面温度, 中でも鼻部皮膚温度は, 情動の影響を受けることが知られている. しかし, 子供の鼻部皮膚温度から子供のストレスを推定できるかについては, 明らかではない. 本研究では, 子供のストレス状況の推定にあたり, 鼻部・頬・額の顔面皮膚表面温度を測定し, ストレス時の子供の温度変化パターンを測定し, 鼻部皮膚温度に基づくストレス推定の可能性について検討した. また, 生理学的指標として心拍変動を同時に測定し, 心拍変動から得られるRRI(RR Interval)を用いたストレス指標との関係を検討した. 検討結果から, 鼻部皮膚温度の変化は, 上昇傾向と下降傾向の2パターンがあり, 成人が下降傾向を示すのにたいして, 学童期の12歳以下の子供は, 上昇パターンを示す可能性が高いことが分かった. また, 子供については, 傾向として, 鼻部と額の温度が同じ, 若しくは鼻部の温度が高い場合, ストレスが高くなっている可能性があると考えられ, 鼻部皮膚温度からストレスの推定ができる可能性があることが分かった.
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