Outline of Annual Research Achievements |
○研究目的 CZTSは汎用材料である4つの元素Cu, Zn, Sn, Sから成る化合物半導体であり、これを光吸収層として利用したものがCZTS太陽電池(レアメタルを含まない)である。本研究にて、CZTSターゲット(Cu, Zn, Sn, Sから成る薄膜原料)を用いた3源同時スパッタにより、太陽電池として高い変換効率が得られるCZTS薄膜組成を見い出す。 ○研究方法 3源同時スパッタにより、組成の異なる3つのCZTSターゲットの電力を調整することで、薄膜の組成制御を試みた。用意した各ターゲットから得られる薄膜組成は、Cu-rich(【PointA】Cu=24.1%, Zn=9.71%, Sn=11.7%, S=54.6%)、Cu-poor, Zn-rich(【PointB】Cu=22.0%, Zn=14.0%, Sn=11.5%, S=52.5%)、Cu-poor(【PointC】Cu=22.8%, Zn=13.4%, Sn=13.9%, S=52.7%)の3つである。薄膜作製には、3inchカソードと独立したRF電源を3基づつ備えたTokki社製のSPM-303スパッタリング装置を用いた。試料の組成はXRFで測定した後、加熱処理を施した。さらに、Glass/Mo/CZTS/buffer/AZO/Al構造の太陽電池を作製し、電池特性の評価を行った。 ○研究成果 3つのCZTSターゲットの電力を調整することで、薄膜の組成制御を行うことができた。電力をPointB : 80W, PointC : 40Wに固定しPointAを0~80Wまで変化させると、熱処理後の組成比率Cu/(Zn+Sn)は0.98~0.87にかけて極めてリニアに推移した。さらに、ソーラーシミュレータを用いてJ-V測定を行った結果、変換効率ηが0.91~3.59%まで増加した。また、同手法を用いて作製した金属組成比Cu=44~46%, Zn=28~30%, Sn=24~26%に含まれる前駆体においては、太陽電池を構成した際に比較的高い効率が得られた。この組成範囲内の前駆体を用いてη=4.78%, V_<oc>=619mV, J_<sc>=13.1mA/c㎡, FF=0.59%を確認した。本取り組みがCZTS薄膜組成の制御技術の1つとして有効である事を示唆している。
|