Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 大学附属農場では, 家畜の取り扱いや家畜管理に関する実習が1年を通じて行われる。これらは畜産学教育のため必要不可欠であるが, 一方で普段飼育管理をしない人物が多数参加し一斉に家畜に接するため、家畜にとってストレスがかかると考えられる。しかし畜産学実習実施に伴う家畜のストレス反応性については知られていない。そこで本研究では搾乳実習の前後で乳牛のストレスレベルがどのように変化したかを調査し、ストレス評価の客観的な指標を探査した。 研究方法 大学3年生の搾乳実習を調査対象とし、搾乳実習7日前と実習初日、実習最終日(4日目)、実習終了後4日目に調査を実施した。各調査日にホルスタイン種の搾乳牛10頭から乳サンプルを採取し乳成分(乳量、乳脂肪、無脂固形、乳蛋白質、乳糖、体細胞数、乳中尿素窒素(MUN))、コルチゾール濃度、オキシトシン濃度を調査した。また乳牛にとっての新規人物からの逃避距離を測定した。統計解析として固定因子を調査日、変量定数を乳牛個体として反復測定分散分析を行い, 事後検定としてDunnett検定を行った。 研究成果 実習前日に比べ, 実習初日には逃避距離が増大した。乳牛が見慣れない学生に対し警戒したと考えられる。しかし実習最終日には逃避距離は減少した。乳量は多くの個体で実習開始後に低下し, 実習終了後4日目まで低かった。逆に実習開始に伴いMUNが有意に上昇し, 基準範囲を超える個体も4頭認められた。ストレス指標であるコルチゾール濃度は実習開始に伴い有意に上昇し, 逆に快適性の指標であるオキシトシン濃度は有意に減少した。これらホルモン濃度の変化は, 実習終了後も認められた。一方, 乳成分のうち乳脂肪、無脂固形、乳蛋白質、体細胞数については個体の影響が有意になったが、調査日による有意差は認められなかった。ストレス評価の指標として逃避距離、MUN、コルチゾール濃度、オキシトシン濃度が適当ではないかと考えられる。
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