Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 心臓血管外科術後に日常生活動作(ADL)能力が低下する患者を少なからず認める. 術後のADL能力は自宅退院の有力な決定因子であるため, 退院時にADL能力が低下している患者の特徴を明らかにすることは重要である. 【研究方法】 2017年4月から10月まで心臓血管外科で待機的に冠動脈バイパス術, 弁置換術または弁形成術, 人工血管置換術を行った46例を対象とした. ADL能力は, Functional Independence measure(FIM)を用いて術前と術後に評価を行った. 術前FIMスコアと退院時FIMスコアを用いて, ADL低下群とADL維持群に分類し, 術前および術後の患者背景因子および身体機能, 術後経過について群間比較を行った. 【研究成果】 ADL低下群は, ADL維持群と比較して, 年齢(67.7±10.3 VS75.7±7.2 ; p<0.05), フレイルの割合(18.0% vs 62.5%, p<0.05)が有意に高く, 術前の歩行速度(1.16±0.21 m/s vs 0.73±0.34m/s, p<0.01), SPPB(11.2±1.0点vs 10.0±2.0点, p<0.05), 一秒率(78.6±9.9% vs 66.9±13.1% ; p<0.05), が有意に低値であった. また, 術後因子では, 術後の人工呼吸器管理期間の遷延(10.5% vs 50%, p<0.05), 術後急性腎不全(2.6% vs 50%, p<0.05)の割合が有意に高かった. 心臓血管外科術後, 退院時にADL能力が低下している患者は, 年齢が高く, 術前のフレイルおよび身体機能低下を有している. さらに, 周術期において, 人工呼吸器管理期間の遷延および急性腎不全を引き起こしている割合が高く, ADL拡大が遅延している可能性がある.
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