Outline of Annual Research Achievements |
【背景および目的】モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)は呼吸器感染症の主要起炎菌として広く認識されている。一方でグラム陰性菌の薬剤耐性因子として外膜タンパク質(Outer membrane protein : OMP)の発現量減少が知られている。これまでの研究で大腸菌や緑膿菌ではOMPと各種抗菌薬耐性の関連は研究され報告されているが、M. catarrhalisのOMPと薬剤耐性に関する報告は少ないことから本研究では、M. catarrhalisのOMP欠損株を作製し、OMP欠損が薬剤耐性に与える影響を調べた。【材料と方法】菌株としてATCC49143株を使用し、外膜タンパク質を調整した。調整した外膜タンパク質をSDS-PAGEで分離し、35-50kDa付近のタンパク質を質量分析装置によるペプチド・マスフィンガープリンティングで同定した。その中で、ポーリンタンパク質と同定された3種類のタンパク質(M35, M45(仮称), OmpE)について、アミノ酸翻訳領域内にトランスポゾンを挿入した標的タンパク質ノックアウト株を作製した(ΔM35, ΔM45, ΔOmpE)。それぞれの菌株について、キノロン系抗菌薬であるlevofloxacinとciprofloxacinの最小発育阻止濃度を微量液体希釈法で測定した。【結果】作製したノックアウト株3株はいずれもPCRで標的遺伝子の野生型消失およびSDS-PAGEで目的タンパク質の消失が確認された。ΔM35, ΔM45, ΔOmpEのlevofloxacinおよびciprofloxacinの最小発育阻止濃度は野生株と比較し、ΔM35で2管上昇, ΔM45で1管上昇, ΔOmpEでは変化しなかった。【考察】本研究により、M35およびM45は軽度ではあるがキノロン系抗菌薬の耐性に関与し、OmpEはキノロン耐性に関与しない可能性が示唆された。今後は対象抗菌薬を増やし検討を継続していく予定である。
|