Project/Area Number |
17H00652
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
臨床医学C
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江口 聡 東京大学, 医学部附属病院, 医療技術職員
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Project Period (FY) |
2017
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2017)
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Budget Amount *help |
¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2017: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
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Keywords | 成人の自閉症スペクトラム症 / 認知特徴 / 心理教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、一般の精神科で成人になって診断される自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)が多く存在していると報告されている(Lehnhardt et al, 2012)。また、仲間からの孤立、疎外感や自信喪失等から二次的な障害を引き起こしやすく、気分障害や不安障害などの合併も多いことが報告されている(Joshi et al, 2010)。当院では成人で発達障害が疑われる方に対して、「発達障害検査入院」として発達障害としての診断、併存疾患の有無、本人の特性や今後についての心理教育を実施している。今回は、当院でASDと診断された方を対象にASDの心理検査の特徴と、それを受けて心理教育プログラムの効果について検討した。 心理検査の結果としては、自記式のCES-Dにおいて気分障害圏に属するものが全体の76%、STAIで特性不安に該当するものが全体66%であった。しかし、ASDとの併存疾患で気分性障害と診断されたのは22%、不安障害と診断されたのは17%であった。認知機能の検査においては、WAISの群指数において言語理解が最も高く、処理速度が最も低い結果となった。WAISにおいて、言語理解は高いが、抽象的な概念の理解が難しい方が多い傾向が見られた。これについてはSCTやP-Fスタディを行うことが難しく、かなり時間がかかる方が多かったことについても抽象的な思考の難しさがあるのではないかと考えられる。予後調査では、自分の特性を知り具体的に動いている(「復職」、「休職」、「移行支援事業所の利用」、「社会参加」、「勉強」等)、ということが多く見られた。 以上のことから、成人のASDにおいて認知的な傾向がある可能性が示唆された。また、一方で、行動を制止的にしてしまう要因に関わる可能性のある不安や抑うつ感を強く感じているものが多い。外来において、うつや不安を主訴に来院した場合に、その主訴のみではなくASDについて考慮することは重要だと考える。また、抽象的な思考の苦手さ、不安や抑うつが高いことによる行動制止の可能性から、診断だけでなく、具体的な心理教育を行うことが重要であると考えられ、診断を伝え、具体的な心理教育を行うことで、本人たちの生活が改善する可能性があると考える。
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