Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】わが国は世界でも有数の超高齢化社会を迎えており, これに伴い運動器障害が増加し, 将来的な要介護状態の増加が懸念されている. 加齢による加齢に伴う筋肉量, 筋力の低下を示す状態をサルコペニアと呼び, 転倒や寝たきりなどの虚弱の要因として重要である. 一方, 深部静脈血栓症(DVT)は肺塞栓症や脳塞栓症の原因となるため, 早期に診断し適切な治療や予防を行うことが重要である. また, DVTは下肢に多く発生し, 高齢者や寝たきり患者はハイリスクであるが, DVTとサルコペニアの関連性については明らかにされていない. 本研究の目的は, 超音波検査(US)を用いて下肢筋を画像評価し, サルコペニアとDVTとの関連性について検討することである. 【研究方法】当院生理検査室にDVTスクリーニング検査として下肢静脈US検査の依頼があった患者42名84肢(平均年齢65.7±15.5歳)と, DVTを認めない健常ボランティア29名58肢(平均年齢61.2±19.9歳)の合計142肢を対象とした. これらをDVTを認めたDVT陽性群(平均年齢68.0±12.7歳)とDVT陰性群に大別し, 陰性群ではさらに年齢により3群に分類した. 45歳未満を若年群(平均年齢28.9±7.5歳), 45歳~64歳を中年群(平均年齢55.7±5.9歳), 65歳以上を高齢群(平均年齢75.1±5.9歳)とした. 【研究成果】腓腹筋厚は加齢に伴い低下し, 男女ともにDVT陽性群と高齢群で有意に低値を示した. 筋エコー輝度も加齢に伴い高値となり, 男女ともにDVT陽性群と高齢群において若年群と比較し有意に高値を示し, 高齢群およびDVT陽性群の男性では中年群と比較し有意に高値を示した. 高齢群の女性では中年群に比較し有意に高値を示した. USの前後一週間以内に腹部computerized tomograph検査が確認出来た24例についてDVT有無によるサルコペニアの陽性率を比較した結果, DVTあり群では100%, DVT無し群では60%であり, DVTあり群において有意に高値であった(P=0.041). 本研究では, US画像を用いて下腿筋を評価し加齢に伴う変化やDVTとの関連性について報告した. 今回の検討においてUSによる下腿筋厚および筋輝度評価は, DVTリスクマネージメントやサルコペニアを評価するための有用な検査法になりうると考えられた.
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