Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
研究計画に沿って、2017年6月から2020年3月までに収集した個体追跡法による行動データをもとに、淡路島ニホンザル集団の個体の示す寛容性の高さについて、行動学的に評価を行った。寛容性の高さの指標として、攻撃的交渉の激しさ、攻撃を受けた個体が攻撃者に反撃する頻度、そしてsilent bared-teeth display (SBT) と呼ばれる劣位の表情が用いられる社会的文脈に着目した。攻撃的交渉に関して、順位関係が厳格で寛容性の低い通常のニホンザルでは、相手に外傷を負わせるような激しく一方的な攻撃が生起しやすい。しかし淡路島ニホンザル集団では、相手に噛みついたり激しく追い立てたりといった攻撃はほとんど生起せず、ほとんどの場合相手に対して威嚇するのみであった。ただし攻撃を受けた個体が相手に攻撃することは非常にまれであり、この点は通常のニホンザルと共通であると考えられた。また通常ニホンザルではSBTが常に低順位個体から高順位個体に対して用いられるが、淡路島ニホンザル集団においても同じく、全てのSBTが低順位から高順位個体に対して表出されていた。以上より、淡路島集団ニホンザル集団では、個体間に厳格な順位関係が存在するものの、攻撃性は非常に低く、通常のニホンザルには見られない寛容な社会を形成していることが示唆された。本研究課題でこれまで明らかにしてきた、観察学習による行動の個体間伝播や食物分配などの向社会的行動の基盤には、このような特異的な寛容性が関わっていると考えられる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Primates
Volume: 60 Issue: 5 Pages: 421-430
10.1007/s10329-019-00742-z
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2019/20190930_1