Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本年度1970年から1980年にかけてのエメ・セゼールに焦点を絞り、セゼールの文学を成立させている歴史的文脈の整理に注力した。同時に、本年度はこれまでの年度とは異なり、セゼールの文学的営みにおける「地理学」の重要性を見出し、指摘することができた。この点は、セゼールの文化的営為を狭義の「文学創作活動」に押し込めるのではなく、より広い間領域的な学的関心へと開くことを意味している。セゼールは「地理学」を一方では植民地主義を可能にした「技術」であるとして厳しく糾弾する。とりわけ、植民地化の過程で現地調査等を支援したパリ地理学会にかんする批判は注目に値する。しかし他方で、自身の文化的営為を説明する際に「想像の地理学」という言葉を案出し、さらに、文学作品においては地理的要素を語彙的にも主題論的にも駆使している点は興味深い。これに加えて、文学史的観点からみるならば、そもそも旧植民地の文学が文学史上に登場する際には、最初は文学としてではなく、地理学の一部として登場した点も無視し難い。これらの点の一部を2020年3月に刊行した二冊の書籍(共著、日本語およびフランス語)で論証した。日本語共著作(『クレオールの想像力』)では、セゼールと「地理学」をめぐる論文に加え、翻訳や年表作成を行った。最終年度にあたる本年度、これまで2年間の研究成果を共著書としてまとめる過程で、「セゼールと地理学」というこれまでに見えてこなかった論点が出現した。今後の研究の中で、この新たな論点をより深化するつもりである。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 2 results, Open Access: 3 results) Presentation (9 results) (of which Int'l Joint Research: 3 results, Invited: 3 results) Book (3 results)
言語情報科学
Volume: 16 Pages: 297-313
120006469231
立命館言語文化研究
Volume: 29-4 Pages: 3-18
レゾナンス
Volume: 10 Pages: 74-75
120006523871