Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
一つの細胞が個体へと成長を遂げる発生の過程では多くの細胞死が起こる。発生に限らず、腸や皮膚などの持続的に細胞が増殖する組織では、日常的に細胞死が生じることで、組織全体の細胞数は常に一定の範囲内に保たれている。近年、ヒト大腸上皮、ゼブラフィッシュ表皮などを用いた研究により、細胞の高密度を起点とする細胞死が報告されているが、細胞死シグナル経路を介した密度調節機構は未だ不明な点が多い。その分子メカニズムの解明を目指し、遺伝学的な研究に優れたショウジョウバエを研究対象とし、密集が起こる蛹期の中胸背側上皮を用いて解析を進めた。平成29-30年度に行った遺伝学的スクリーニングにより、細胞死へ関与しうる因子が同定された。この因子の妥当性は、平成30-31年度に行った複数のRNAi系統を用いた解析によって示されただけではなく、その因子の発現上昇の観察によっても確認された。更なる解析の結果、確かに細胞死シグナルは誘導されるが、脱落する細胞では、アポトーシスに特徴的な細胞膜の崩壊や核の分断化はほとんど観察されないことが判明した。つまり、細胞は完全に死んでおらず生きている可能性が考えられ、この独特な細胞の脱落様式は、同定した因子が関わる細胞生理的な現象により誘導されうることが分かりつつある。ちなみに、前年度の報告では、同定した因子はEGFR/ERKシグナルを負に調節することを想定していたが、平成31年度に行った解析の結果、両者のシグナル経路は独立に細胞死シグナルの活性化に関わることも明らかにした。本研究を介して明らかになった細胞死シグナルを介した制御機構が、将来的には密度調節の異常により起こる病気や上皮細胞の脱落を伴う疾患を理解する一助になることを期待している。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Development
Volume: 146(4) Issue: 4 Pages: 1-28
10.1242/dev.169037
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~genetics/publication/index.html