緑藻型光合成に必要な大型集光アンテナ-光化学系I超複合体の構造・機能相関の解明
Project/Area Number |
17J40032
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Plant molecular biology/Plant physiology
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Research Institution | Yamagata University (2018) National Institute for Basic Biology (2017) |
Principal Investigator |
河合(久保田) 寿子 山形大学, 理学部, 助教
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2018)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2017: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 光化学系I / 光合成 / 緑藻 / PSI-LHCI / 光化学系 / PSI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、緑藻の光化学系I(PSI)とその集光アンテナ(LHCI)の複合体構造をクライオ電子顕微鏡及び単粒子解析によって解き明かし、緑藻が持つ高い集光能力の仕組みを構造情報から理解することを目的としている。緑藻のPSIは、9種類のLHCI(LHCA1-9)からなる大型アンテナを持ち、植物のPSIが持つ4分子のLHCI(Lhca1-4)からなる小型アンテナと比較して、41%も多くのフォトンを集めることが出来る。しかし、アンテナが大型であるために、全てのLHCAを結合した安定な複合体を得ることは非常に困難とされていた。そこでまず、フェレドキシン(Fd)アフィニティーカラムクロマトグラフィーとAmphipolを組み合わせ、純度よく安定な複合体を精製する方法を確立した。そのサンプルを用いて良質の電子顕微鏡画像を得るため、緑藻PSI-LHCIに適した氷埋包条件(蛋白質濃度とバッファー組成)と氷の厚みを制御する濾紙への吸着時間を詳細に検討した。その後、画像データを取得し単粒子解析を行い緑藻PSI-LHCIの構造を6.9Aで決定することに成功した。この構造情報により、緑藻のPSIは9種類10分子のLHCAを結合しており、そのうち8分子はPsaF/J側に4分子+4分子の二層構造を形成し、2分子はPsaGとPsaHの間に位置していることが明らかとなった。特に後者の2分子は植物には無いアンテナであることから解析を進め、lhca2変異体を用いた構造解析と安定同位体を用いた質量分析からこれらのアンテナはLHCA2とLHCA9であることを示した。さらに、lhca1変異体を用いて、LHCA1の結合位置を確定した。このように本研究では、緑藻型PSIの周囲に10分子のLHCAがどのように配置されているか、さらに植物にはない特殊な位置のアンテナがLHCA2及びLHCA9であることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クライオ電子顕微鏡画像を用いた単粒子解析を行うにあたり、まず、FdアフィニティークロマトグラフィーとAmphipolを組み合わせ、高純度で安定なPSI-LHCIを得る方法を確立した。このサンプルを用いて構造解析を行い6.9A分解能での構造を得ることに成功した。それによると、緑藻のPSIは10分子のLHCAを結合していた。8分子はPsaF/J側に4分子+4分子の二層構造でLHCIベルトを形成し、2分子はPsaGとPsaHの間に位置していた。後者の2分子は植物には無い緑藻特異的なアンテナ配置であり、今年度はlhca変異体を用いてこの2分子の同定を行った。種々の変異体を用いてPSI-LHCIを精製して構造解析を行ったところ、lhca2変異体において、緑藻特異的な2分子のアンテナが欠損していることが明らかとなった。 さらに安定同位体培地で培養した野生型と通常培地で培養したlhca2変異体から精製したPSI-LHCIを用いてPSIあたりのアンテナのストイキオメトリーを調べた結果、lhca2変異体ではLHCA2のみならずLHCA9も失われていることが示された。つまり、緑藻特異的な2分子のアンテナはLHCA2及びLHCA9であると同定された。次に、LHCA2とLHCA9のうちどちらがPsaG側でどちらがPsaH側に位置するのかを計算によって求めた。まず、LHCA2とLHCA9のアミノ酸配列情報を元に、SWISS-MODELを使ってLHCA2とLHCA9のモデル構造を構築した。それらをUCSF chimeraの’’fit in map’’機能を使って3D電子密度にあてはめてcorrelation valueを計算し、緑藻特異的アンテナの配置はPsaG-LHCA9-LHCA2-PsaHであると結論付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、分光学からのアプローチにより緑藻特異的なアンテナであるLHCA2及びLHCA9が実際に集光能力を持っているかについて検討する。具体的には、時間分解蛍光測定を行う。野生型とlhca2変異体のPSI-LHCIサンプルを459 nmで励起、685 nmと710 nmで蛍光発光を検出し、クロロフィルの蛍光の上昇と減衰曲線を測定する。これまで私は、緑藻特異的な位置に2分子のアンテナが存在することを構造的に示したが、実際にこれらのアンテナに集光能力があるかどうかについては報告がない。そこで本研究では特に、野生型とlhca2変異体の違いに注目する。特に、50-60 psの早い蛍光寿命の割合から、lhca2変異体のPSI-LHCIの集光能力が実際に野生型より劣っているかについて解析する。
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Report
(2 results)
Research Products
(14 results)