近代文化財保存復元を目的としたプラスチック材料確定方法科学の確立
Project/Area Number |
17K01199
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Research Field |
Cultural assets study and museology
|
Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
山延 圭子 (高橋圭子) 東京工芸大学, 工学部, 教授 (00188004)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
|
Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2019: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2017: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
|
Keywords | ビネガーシンドローム / アセチルセルロース / NMR / 可塑剤 / 定量分析 / 微量直接一括劣化診断 / 映像フィルム / 酢酸セルロース / 核磁気共鳴スペクトル / 半経験的分子軌道計算 / ジメチルスルホキシド / 定量劣化分析 / トリフェニルリン酸 / 質量分析 / 保存科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は代表的近代文化財の映像フィルム劣化現象であるビネガーシンドロームを分子レベルで明らかにし、フィルム劣化状態診断指標・劣化防止・修復法を 提案することが目的である。具体的には微量定性定量分析方法のルーチン化を最終目標としていた。 昨年度までに、劣化度すなわちセルロースのアセチル基置換度非依存性溶媒を見出し、温度条件など詳細な検討を重ねた。核磁気共鳴(NMR)装置の測定結果から、1グルコース残基あたりのアセチル基存在比を求める検量線を作成した。アセチル置換度(DS)1~3のアセチルセルロースを探査した共通重溶媒にてNMRを測定し2年度はさらに改良を加え、酢酸臭・変形・変色がなく、目視ではビネガーシンドローム未発症と診断されるフィルムでも20%程度のアセチル基の脱離が生じていることが確認できた。早期診断を達成した。 フィルムサンプリング方法も含めてさらに検討した結果、NMRを用いた直接的かつ定量性を有するビネガーシンドローム早期診断法を確立できた。機会がほとんどなかったが、有用な方法として、公開できる段階に至った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
映像フィルム劣化現象であるビネガーシンドロームを分子レベルで明らかにし、フィルム劣化状態診断指標・劣化防止・修復法を提案することが目的であり、具体的には微量定性定量分析方法のルーチン化が最終目標であった。 昨年度、実際の映像フィルム分析への応用を目指して、さらなる検討を重ねたが、今年度は、特殊な技術不要であり、一般性のある定量定性分析法の具体的提案を目的とし、NMR測定条件のほかに、前処理も含めた試料準備法ついても検討した。 目視ではビネガーシンドローム未発症と診断されるフィルムでも20%程度のアセチル基の脱離が生じていることが確認できた。ビネガーシンドロームの定量的かつ早期診断を達成した。可塑剤の特定と診断時での配合割合も計算できた。高温における測定条件が確定したので、通常の条件で保管されているフィルムに対応できる診断遮蔽物質、水の除去方法、診断中の劣化の有無、より正確性を付与するための観測範囲の確定など、測定条件と解析条件を精査した。結果的に、対象フィルムより直径1㎜の円形を市販パンチング機で3粒ほど取り出し、前処理として真空ポンプにより室温で乾燥するという、簡易サンプリング方法を確立し、NMRを用いた直接的かつ定量性を有するビネガーシンドローム診断法を具体的に提案するに至った。 ビネガーシンドローム発症には数十年を要し、発症フィルムが近辺にあると感染すると把握されていたが、アセチルセルロースフィルムの劣化は連続的に進行している化学反応であることも証明できた。すなわち、ビネガーシンドロームの化学的解釈ができた。これは著しい進展である。論文や発表による成果の公表が、コロナ禍が災いして十分に達成されていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
成果の公表、特に一般フィルムアーカイブ担当者向けの、日本語での著作や口頭発表が、コロナ禍が災いして十分に達成されていない。成果の、科学者以外の一般アーカイブや博物館などへ公表が一番の推進すべき方法であろう。また、ビネガーシンドローム発症には数十年を要し、発症フィルムが近辺にあると感染すると把握されていたが、アセチルセルロースフィルムの劣化は連続的に進行している化学反応であることも証明でき、ビネガーシンドロームの化学的解釈ができたので、この科学としての公表と精査に重点を置きたい。
|
Report
(4 results)
Research Products
(7 results)