微視的類型論によるパラレル・コーパスを利用したバルト海周辺諸語の不定人称文の研究
Project/Area Number |
17K02680
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Research Field |
Linguistics
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐久間 淳一 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (60260585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 浩司 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (40313621)
當野 能之 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (50587855)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2019)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2017: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 不定人称文 / パラレル・コーパス / フィンランド語 / アイスランド語 / スウェーデン語 / リトアニア語 / ロシア語 / 言語学 / 統語論 / 言語類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究で作成した『星の王子さま』のパラレル・コーパス及びその他の各種コーパスを用いて、引き続き、フィンランド語をはじめ、バルト海周辺諸言語における不定人称文についての考察、及び言語間の比較を行った結果、主として次のような成果が得られた。 『星の王子さま』のフランス語原文における不定人称代名詞onについて、そのスウェーデン語訳を詳細に分析したところ、いくつかの動詞で一貫してman構文を使わずに訳されているものがあることがわかった。例えば原文が「書く」を意味する動詞の場合、det star... (lit. it stands..「~と書かれている」) という非人称構文が用いられる。大規模コーパスでも、動詞skriva(書く)がman構文で用いられる例はほとんどない。また、『星の王子さま』のスウェーデン語訳は2種類あるが、一方の翻訳にはman構文が一切用いられていない。このことから、man構文と非人称構文は一部で競合していることがわかる。 アイスランド語に関しては、新聞記事のコーパスも用いて調査した結果、受動進行形と呼ばれる不定人称文について、人称構文をとる能動進行形と比べ、過去時制で現れる割合が極めて低いことがわかった。この違いは、動作性アスペクトの対立関係の違いに起因する可能性がある。 なお、本年度は、本来、コーパスを用いた分析に加えて、分析結果の妥当性を検討するための現地調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、そのうちの一部を取り止めざるを得なくなった。その代替措置として、インターネットを介した各国の専門家との意見交換を行ったが、それによって、現地調査のすべてが代替できるわけではない。そのため、元々は本年度が本研究課題の最終年度であったが、2020年度まで研究期間を延長することとし、申請の結果、延長が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が対象とする言語についてのパラレル・コーパスの構築、それを利用した各言語における不定人称文の検討、及び言語間の比較については、概ね当初計画通り進捗している。その結果として、先行研究では記述されていない事実を指摘すると共に、不定人称文の機能に関して、いくつか有望な仮説を見出すなど、一定の成果を挙げることができた。他方、2019年度に関しては、これらの成果を検証するために不可欠な現地調査の一部について、新型コロナウイルス感染症の広がりにより断念せざるを得なくなった。そのため、本来、本年度が最終年度であった本研究課題を完結させることはできなかった。幸い、2020年度まで研究期間の延長が認められたため、本年度できなかった研究については次年度に繰り越して、研究計画の完遂を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの進捗状況は、本年度実施予定だった現地調査を中止した以外は、ほぼ計画通りであり、また、現地調査ができなかったことを理由に、研究期間の延長が認められていることから、次年度については、本年度できなかった現地調査を実施することを第一の目標とする。また、現地調査の結果を踏まえて、コーパスデータの検討から得られた仮説を実証的に検証し、研究成果をとりまとめて学会等で発表を行う。ただし、新型コロナウイルス感染症は現時点で未だ終息せず、海外における現地調査が実施できるかどうかは、依然として不透明と言わざるを得ない。最終的に現地調査は難しいと判断せざるを得ない場合は、代替手段を講ずることになる。
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Report
(3 results)
Research Products
(6 results)