Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
パクリタキセル(Ptx)は、抗がんスペクトルも広く、未だ第一選択薬となっているがん種も多い、治療効果の高い抗がん剤の一つである。しかしながら、その高い疎水性のため臨床では可溶化剤としてエタノールと界面活性剤の一種であるクレモフォールに溶解させて用いられている。そのため薬物ががん部位以外の全身に分布し易い上、可溶化剤自体も副作用が強く、この点において改善が望まれている。本研究では、Ptxの薬理活性部位である2'-OH基と、生分解性両親媒性高分子であるポリエチレングリコール-ポリグルタミン酸共重合体(PEG-b-PGlu)とをアセタールリンカーを介して結合させ、可溶化させることで副作用の軽減及びEnhanced Permeability and Retention Effect (EPR効果)による腫瘍集積性を向上させることを目的としたパクリタキセルのプロドラッグ化を目指した。このプロドラッグは、結合体で存在する場合は薬理活性が低い状態を維持している一方、腫瘍組織内の酸性環境下でアセタールリンカーが解離し、薬理活性が復元されるというものを設計したものである。グルタミン酸側鎖へのエチレンジアミン導入を試みたところ、側鎖に対して最大で20%程度しか導入することができなかったため、側鎖部位をグルタミン酸ではなくアスパラギン酸に変更したところ(PEG-b-PAsp)、側鎖へのアミン導入率100%を達成した。結合させたアミンがエチレンジアミンでは、分子鎖内に回転軸が存在せずフレキシビリティが低く、次のステップであるカルボキシランの結合も導入率が低くなると懸念される。そのため、導入するアミンをエチレンジアミンから1,2-bis(2-aminoethoxy)ethaneに変更して導入を行ったところ、同様に側鎖への導入率100%を達成することができた。