Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、近年増加し肝細胞がんの前がん状態として着目されている非アルコール性脂肪性肝炎 (Nonalcoholic steatohepatitis [NASH])の臨床検体のエピジェネティック解析を基盤として、NASH特異的な発がんの分子機構の解明やNASHの発がんリスク評価指標の策定を目指す。病的肥満患者の減量手術中に、同意を得て採取されたNASHの組織所見を示す肝生検検体、大腸がん肝転移症例の肝部分切除術標本より得られた正常肝組織検体、NASH由来肝細胞がん症例の肝部分切除術標本よりより得られたNASHの組織所見を示す非がん肝組織検体とがん組織検体、肝炎ウイルス感染陽性肝細胞がん症例の肝部分切除術標本より得られた非がん肝組織検体とがん組織検体等 (総計264検体)において、HumanMethylation450 BeadChipを用いゲノム網羅的DNAメチル化解析を行った。NASH検体において正常肝組織検体と比較してDNAメチル化率が有意に異なるプローブは3331プローブ存在し、NASHにおいてDNAメチル化異常が起こっていることがわかった。主成分分析をおこなったところ、NASH検体は正常肝組織とも肝炎ウイルス感染陽性慢性肝炎ないし肝硬変症検体とも異なるDNAメチル化プロファイルを示した。傾向性検定では、NASH特異的DNAメチル化異常はNASHの早期段階で起こり、NASHの進行とともに亢進し、NASH由来肝細胞がんに継承されることがわかった。NASH特異的でNASH由来肝細胞がんに継承されるDNAメチル化異常を示すがん関連遺伝子候補として、WHSC1やWDR6等を同定した。以上より、NASH特異的DNAメチル化異常はNASH由来肝細胞がんに継承され、がん関連遺伝子等の発現異常を介して、NASH由来肝細胞がんの多段階発生に関与している可能性が示された。
All 2018 2017
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Carcinogenesis.
Volume: 38 Issue: 3 Pages: 261-270
10.1093/carcin/bgx005