Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成29年度は、ヒトiPS由来肝細胞やヒト初代肝細胞を用いて血管化三次元肝組織の構築に取り組んだ。ヒトiPS由来肝細胞を用いた検討においては、交互積層による細胞コートを施すため、シート状に分化誘導されたヒトiPS由来肝細胞を、アクターゼを用いて単一細胞に分離した。その後、交互積層法を用いて、血管化三次元肝組織の構築は可能であったが、アルブミン産生能は、単一細胞にした時点で、劇的に低下することが分かった。したがって、肝細胞の機能を維持するには、培養容器からの単一細胞の調整・回収方法の検討、または、シート状のまま積層体を構築するなどの工夫が必要と考えられた。初代肝細胞を用いた検討においては、肝細胞の分離法について検討した。まず、予備検討として、ラット肝からのコラゲナーゼ処理により肝細胞分離を試みた。次に、ヒト初代肝細胞については、倫理委員会の承認に基づき、ヒト切除肝から肝組織片を採取し、コラゲナーゼ処理によりヒト肝細胞を分離した。分離されたヒト肝細胞に対し、交互積層法による細胞コート法を施し、ヒト線維芽細胞、血管内皮細胞を用いて、血管化三次元肝組織の構築は可能であった。機能面では、アルブミン産生は確認されたが、時間経過で著しく低下することが分かった。今後、肝障害モデル動物に対する組織片による治療効果等の実験に進む際には、肝細胞の機能を維持するべく、組織構築から移植までのタイミングや、移植部位(皮膚や肝表面)などの検討が必要と考えられた。