Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
近年の研究よりクローン病とオートファジーの関連性が明らかになった。われわれは腸管上皮で起こるオートファジー、とりわけAtg5非依存的オートファジーの変調に着目し本研究を実施した。クローン病患者由来腸管上皮サンプル5例、大腸癌患者由来正常組織サンプル10例を用い、ウエスタンブロット法にて検討を行った。クローン病では通常型オートファジー関連たんぱくLC3の低発現、オートファジーの選択的分解基質であるp62の高発現、ならびにAtg5非依存的オートファジー低減を想定し検討を行った。予想に反しLC3は症例間の個体差が大きく、p62関しても同様の結果であった。Atg5については、両サンプルおいて同様の発現が見られ、Atg5非依存的オートファジーに関わる差を見出すことはできなかった。続いて、クローン病組織30例、正常組織10例を固定後、パラフィン切片を作成、薄切、LC3、Atg5、p62抗体を用いて免疫染色し、発現を観察した。クローン病サンプルにおいてp62の発現が高い傾向を見出したものの、正常組織との間に差を見出すことはできなかった。また、LC3およびAtg5においてもサンプル間で明らかな差を観察しなかった。よって、患者組織を用いた検討では個体差を完全に除くことは困難なため、腸管上皮由来細胞株Caco2を用い、誘導が示唆される化合物ならびにオートファジー阻害剤BafilomycinA1添加によるオートファジーの動態を観察した。通常型およびAtg5非依存的オートファジーを検出するため、ファゴソーム膜を特異的に蛍光染色し共焦点顕微鏡にて観察した。化合物添加によるオートファジー誘導並びに阻害剤による阻害が観察された。以上のことから、ヒト組織サンプルにおけるオートファジーの観察について、個体差などの交絡因子を抑える検討方法について今後模索し再検討することとする。