Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
脊髄損傷の重篤化には活性酸素(ROS)による「興奮毒性」が深く関与している。研究代表者はこれまでに、ROSの一つである過酸化水素の脊髄前角に対する作用機序を検討し、N型電位依存性Ca2+チャネルの活性化を抑制することで過剰なグルタミン酸(興奮性神経伝達物質)の過剰放出を効率的に抑制できる可能性を報告してきた。平成29年度は過酸化水素が脊髄前角運動細胞自体の興奮性に与える影響とその機序について、脊髄スライス標本を用いたパッチクランプ法で検討した。電流固定法(ビククリン存在下)にて電流刺激(ステップパルス、1秒、20pA間隔、-80 pA~220 pA)を加えると、過酸化水素投与により膜抵抗、活動電位発生数は増加し、rheobase(活動電位が発生する最小の電流刺激)、AHPは減少し、細胞興奮性が増強した。AHPの中でもSKチャネルが関与するmediumおよびslow-AHPが減少しており、SKチャネル作動薬投与による神経保護の可能性を示唆している。さらに、脊髄損傷モデルラットにおいて、前述の薬剤の効果を検証した。平成29年度は欧米で難治性疼痛に対して臨床応用されているN型電位依存性Ca2+チャネル阻害剤(ジコノチド; ZIC)の脊髄保護効果を検討した。まだ予備実験の段階ではあるが、ZICのくも膜下投与により、運動機能 (Basso-Beattie-Bresnahan score)は、対照群と比較して脊髄損傷後7日目より有意な改善が得られた。さらに、免疫組織学的実験においてもZIC投与によりNeuN陽性細胞数は有意に増加していたことから、ZICには脊髄保護効果があると考える。今後は椎弓切除のみを行ったSham群も加えて、投与量、投与期間について検討し、最良のZIC使用方法を決定していく予定である。また、SKチャネル作動薬の効果、ZICとの併用効果についても検討予定である。
All 2017
All Presentation (1 results)