Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
平成19年度は最適採餌戦略の脳内機構に関して、以下の知見を得た。(1) リスク感受性選択:行動滴定法(behavioral titration)を用いて、ヒヨコのリスク感受性を解析した。二つの餌場を用意し、その一方からは常に小さな利潤率を与え、他方からは等確率(p=1/2)で高低2種の利潤率を与えた。ここで、利潤率とは、報酬量(餌の量)を処理時間(遅延と消費時間の和)で割った商である。利潤率のリスクは、量を変動させても、遅延を変動させても、等価に実現できる。結果、ヒヨコは量のリスクに対しては回避(aversion)を、遅延のリスクに対しては選好(proneness)を示した。量と遅延は等価ではない。(2) 競争採餌と衝動性:「小さくて近い餌」と「大きくて遠い餌」の二者択一における選択を、ヒヨコで計測した。「大きい餌」よりも「近い餌」を優先する行動形質を、衝動性と呼ぶ。単独で採餌経験を積んだ個体は、「大きい餌」が遠ざかるほど、それを選ぶ頻度を優位に減らした。他方、他個体と同時にトレーニングすることによって競争的状況に置かれた場合には著しい衝動性の亢進をしめし、「近い餌」を選ぶ頻度が著しく高まった。このことは、競争採餌が衝動性を高めるとする仮説を支持する。さらにSSRIの投与は、「近い餌」を選ぶ頻度を低下させ、その結果、ヒヨコの採餌収量は有意は増加した。この結果は、セロトニンが時間経過の知覚を統制する脳内機構に対して、修飾作用を持つことを示唆する。現在、基底核の単一ニューロン活動を導出し、衝動性関連の活動の解析を始めている。
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