Budget Amount *help |
¥11,700,000 (Direct Cost: ¥11,700,000)
Fiscal Year 2007: ¥5,300,000 (Direct Cost: ¥5,300,000)
Fiscal Year 2006: ¥6,400,000 (Direct Cost: ¥6,400,000)
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Research Abstract |
脳機能を媒介する神経機構を理解するためには,神経回路を構成する特定のニューロンの行動生理学的な役割の解明が必須である。我々の研究グループは,遺伝子発現の特異性に基づいて特定のニューロンの除去を誘導する遺伝子改変技術(イムノトキシン細胞標的法)を開発し,大脳基底核神経回路を構成する特定ニューロンの行動生理学的な役割を明らかにしてきた。本研究では,イムノトキシン細胞標的法を改変し,特定ニューロンタイプの機能を一過性に抑制するための新しい遺伝子改変技術の開発に取り組んだ。この目的のために,イムノトキシンの緑膿菌毒素の部分をテタヌストキシンL鎖の変異体に置換した組換え体タンパク質イムノテタヌストキシン(ITet)を作製した。この組換え体タンパク質は導入遺伝子であるヒトインターロイキン-2受容体αサブユニット(IL-2Rα)を発現するニューロンに取り込まれ,神経伝達物質の放出に必要なvesicle-associated membrane protein-2(VAMP-2)を切断することによって標的ニューロンの機能を阻害する。Itetを大腸菌で発現させ,複数のカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。線条体の特定ニューロンでヒトIL-2Rαを発現する変異体マウスにItetを注入した結果,一過性の行動変化を誘導すると共に,組織に含まれるVAMP-2のレベルを低下させた。一方で,線条体へのItet投与は,変異体マウスの脳の形態には影響せず,線条体における細胞損傷を誘導しなかった。以上の結果から,Itetは,生体内でヒトIL-2Rαを発現する標的ニューロンタイプに作用し,その機能を一過性に抑制することが可能なことが示された。本技術は,今後,様々な行動を媒介する脳神経回路のメカニズムの解明に有益なアプローチになると考える。
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