Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 功太郎 国立精神・神経センター, 神経研究所・微細構造研究部, 室長 (50415569)
加藤 怜子 国立精神・神経センター, 神経研究所・微細構造研究部, センター研究助手 (00392431)
前川 素子 国立精神・神経センター, 神経研究所・微細構造研究部, 流動研究員 (50435731)
相馬 美歩 国立精神・神経センター, 微細構造研究部, 流動研究員 (70328756)
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Budget Amount *help |
¥5,200,000 (Direct Cost: ¥5,200,000)
Fiscal Year 2007: ¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2006: ¥2,500,000 (Direct Cost: ¥2,500,000)
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Research Abstract |
Fynチロシンキナーゼは大脳辺縁系に強く発現し,その遺伝子欠損マウスは情動行動異常を示す。本研究ではFyn欠損マウスを情動記憶障害モデルとして,本分子の欠損によって引き起こされる細胞内情報伝達過程の異常と恐怖情動記憶の形成・消去の障害との関連性を解析する。このために,まずFynが情動記憶の形成と消去に関連してどのように変動し,Fyn依存性の蛋白質チロシンリン酸化シグナル伝達系の変動とどのように相関するかを解析し,これらのシステムが恐怖記憶に関連する神経回路を制御する分子神経機構について検討する。 結果と考察 1.野生型マウスでは文脈的恐怖条件付けにおける記憶獲得過程において,背側海馬においてFynの一過性の活性化がおこることを明らかにした。この活性化は条件刺激と無条件刺激の連合に依存していた。また,Fyn欠損マウスの文脈的恐怖条件付けにおいては,異なった文脈の弁別が特異的に障害されていることが明らかになった。一方,野生型の手がかり的恐怖条件付けにおいては扁桃体でFynの活性化がおこることが明らかになった。 2.海馬ならびに扁桃体においてFynの活性化に続いてNMDA受容体NR2Bサブユニットのチロシンリン酸化の亢進が認められた。 3.恐怖記憶の消去過程では扁桃体の活性化型FynとNR2Bリン酸化は共に低下した。一方,sulpirideによる恐怖記憶の消去促進に対応して扁桃体外側核におけるc-Fos発現が亢進した。 4.以上の結果から,Fynの活性化は恐怖記憶の獲得時に亢進し,消去過程では低下すること,Fyn下流の蛋白質チロシンリン酸化も恐怖記憶獲得時には亢進し,消去過程では低下することが明らかになった。Fyn欠損マウスでは恐怖記憶形成の亢進,消去過程の障害が認められ,逆にFynの過剰発現マウスでは情動記憶形成の低下が認められることから,Fynは下流蛋白質のチロシンリン酸化を介して過度の記憶形成を抑えることが推測される。また,野生型マウスの恐怖記憶消去過程ではリン酸化チロシンの脱リン酸化が促進されると考えられ,記憶形成過程とは異なったシグナル伝達経路が関与する可能性がある。
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