水溶液中の溶質が感じるポテンシャルの揺らぎと溶質間相互作用
Project/Area Number |
18031028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Science and Engineering
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
秋山 良 Kyushu University, 理学研究所, 准教授 (60363347)
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Project Period (FY) |
2006 – 2007
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2007)
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Budget Amount *help |
¥5,100,000 (Direct Cost: ¥5,100,000)
Fiscal Year 2007: ¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2006: ¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
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Keywords | 化学物理 / 生物物理 / 統計力学 / 分子認識 / 計算物理 / 水のゆらぎ / エントロピー / 溶媒の並進運動 |
Research Abstract |
細胞質では多数の巨大分子が混み合っている。この混み合った水溶液の安定性が最近関心を持たれる様になり議論されて来ている。この問題に対する理論的取り組みは、主に巨大分子に着目して行われて来た。そうした従来の取り組みに対して、我々は溶媒分子の並進運動の効果を調べた。そのため、溶媒分子をも露に扱う模型を扱う必要があった。そこで、液体の積分方程式理論(OZ-HNC理論)を用いてこの問題を再検討した。多くの枯渇力の議論の場合と同様に、巨大分子を含む各分子は剛体球モデルで扱った。その結果、混み合い分子が希薄な場合ですら、1)巨大球間相互作用の引力部分は溶液分子の並進運動に由来している事、及び2)巨大球間相互作用における混み合い分子添加効果を定性的に説明する為に、混み合い分子添加に伴う溶媒分子を含めた全数密度の変化が重要である事が分かった。この問題について小粒子を無視する事のできる条件などを考察した。また具体的な蛋白質のモデルや、キセノシの吸着などの計算を行い複雑な形状の分子にたいしてもこうした溶媒分子の取り扱いが重要である事を示した。 平成19年度には上記の結果をふまえて、単純電解質溶液中の同符号に帯電した巨大球間相互作用に対する研究を開始した。その結果は、2つの巨大球が同符号の電荷を持つ場合でも、電解質濃度が細胞質程度であれば、溶媒分子の並進運動効果による引力は重要である事を示唆している。さらに、この計算結果と、より詳細な水のモデルを用いた場合の計算結果を比較検討する事で、ホフマイスター系列及び逆ホフマイスター系列を合理的に理解する描像を得た。溶質会合の(逆)ホフマイスター系列の話として考える。まず、ホフマイスター系列は、イオン半径が小さくなるに従って溶質分子間の引力が強くなると纏められる。溶媒分子の並進運動効果による引力は、溶液を構成する分子の数密度に概ね比例する。ここで、イオン半径の小さなイオンほど電縮の効果が大きいため、溶液を構成する分子の数密度が大きくなる。従って、イオン半径の小さなイオンほど、同じ濃度での溶液分子が駆動する溶質間引力は大きくなる。よって、溶液分子の数密度に注意する事でホフマイスター系列は説明できそうである。一方、正電荷を持った溶質の会合に対するアニオンの効果は逆ホフマイスター系列になるが、これは水分子に対してSPC/Eなどの詳細な水分子モデルを用いた場合にのみ計算結果に現れる。この事は、アニオンから水をはぎ取る脱水和の効果が系列を決める大きな要因になっていると理解出来る。これらの内容を纏めて出版した。
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)