Budget Amount *help |
¥5,000,000 (Direct Cost: ¥5,000,000)
Fiscal Year 2007: ¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2006: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
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Research Abstract |
有機分子[Pd(dmit)_2]は,1個の不対電子をもつ二量体となって種々の陽イオンと塩をつくり,スピン1/2三角格子量子反強磁性体を与える.平成19年度の研究課題として,強くフラストレートした量子スピン系であるこれら一連の[Pd(dmit)_2]塩で,わずかな格子構造の違いによってスピン液体相や電価分離相,スピンギャップ相など多様な量子相が出現する起源を系統的に理解するための実験として,これまでにおこなった磁性測定に加えて,電子状態の異方性を最も精度よく知ることができる分光測定を近赤外〜中赤外領域で進めた。多くの有機導体では,二量体内の結合性軌道から反結合性軌道への励起が,二量体間の電荷移動励起と混じり合って中赤外領域に観測されるが,[Pd(dmit)_2]塩では,二量化が極めて強いので,二量体内励起は近赤外領域に,二量体間励起は中赤外領域に分離して観測され,電子状態についてさらに詳しい情報を得ることができる。室温から10Kへの試料冷却に伴い,[Pd(dmit)_2]塩では一般に電荷移動のギャップが明瞭になることが明らかになり,磁気的フラストレーションが強くなるほど二量体間励起のギャップ構造と二次元面内異方性が小さくなるという相関があることがわかった。二量体間電価分離相への相転移は近赤外領域の吸収帯の顕著な分裂として観測・確認され,スピンギャップ相への転移などに伴う格子対称性の低下は,中赤外部の振動スペクトルの変化として鋭敏に検出された。構造と電子状態の異方性の相関の解析を経て,系統的実験結果として公表できる段階に至っている。磁性測定では,高温常磁性相から非磁性電価分離相への転移に伴う磁化率の不連続変化を,圧力下で測定し,高温相の電子状態の圧力による変化を調べることができた。またNMRの研究者と協力して,[Pd(dmit)_2]塩がスピン液体相をもつことをほぼ確立した。
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