X線分光による超強磁場下での極限電子磁気状態の同定と未知電子磁気状態の探索
Project/Area Number |
18044006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Science and Engineering
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
原田 勲 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (10030785)
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Project Period (FY) |
2006 – 2007
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2007)
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Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 物性基礎論 / 磁性 / 強相関電子系 / 高エネルギー分光 / 磁場誘起価数転移 / 超強磁場 / X線分光 / 希土類元素L吸収端 / 磁気円2色性の理論 |
Research Abstract |
強磁場下での高エネルギーX線分光実験は、今世界中の競争のなかにある。それは例えば100T級強磁場のエルギーが交換相互作用や時には電子系のエネルギーと対等になり、様々な相転移の可能性が生じ、これまでに無い新しい相の実現が可能と考えられるからである。本研究では、磁性体におけるそのような新奇な量子現象やそれらに伴う新機能評価・探索を元素選択性、殻選択性を特徴とするX線分光を通して行うことが目的であった。 私たちが先ず選んだ研究テーマは「磁場誘起価数転移のX線吸収分光による研究」である。この研究は、本特定領域研究の計画班松田(東北大)らによる実験に触発されたもので、以後その実験研究者たちとの密接な連携の下で研究が遂行された。具体的には、強磁場下におけるEuNi2(Si0.18Ge0.82)2のX線吸収スペクトル(XAS)の実験である。この実験は磁場によりEuの価数転移を誘起し、それをXASによって観測したものである。この実験は、まさにXASの元素選択性を有効に生かし、的確にEuの価数転移を捉えていることを私たちはモデル計算により示した。私たちのモデルでは基底状態において(4f)6の状態にあるEu3+と(4f)7L(Lは伝導電子帯に正孔があることを示す)の状態にあるEu2+とが、量子力学的に混成している。Eu3+はJ=0の状態にあり、Eu2+はJ=7/2の状態にあることを考慮すると、磁場によりEu2+のエネルギー利得が大きくなり、更に周りのEu2+からの平均場を考慮すると価数転移が起きることが容易に想像できる。このような状態にあるEuのXASを計算し、2ピークを持つ実験スペクトルの強度比と比較することによりEuの価数を正確に見積もれることを明らかにした。 しかし問題も残されている。そのひとつに、XAS終状態に存在するコアホールによる多体問題で、価数の見積りに曖昧さを導入する。今後、その効果の役割を明らかにしたい。更に、磁場誘起価数転移とこれまでに知られている温度誘起価数転移との関係なども明らかにすること、この物質での磁気円2色性(MCD)の研究を発展させることなどが今後の課題である。 この2年間,特に実験家との交流や学会などでの成果発表に努めた、このために旅費に多くの予算を割いたが、これは相互の情報交換に大層役立ち,新しい研究の展開に結びつくものである。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)