Budget Amount *help |
¥3,700,000 (Direct Cost: ¥3,700,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2006: ¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
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Research Abstract |
本研究では,光合成電子伝達系を構成する光化学系II(系II)等の膜タンパク質複合体の解体,修復,構築の仕組みを解明すること,および,構築された複合体における反応機構を原子レベルで解明するために,とくに系II複合体を対象として,構造分析を目指している。 本研究では,系II複合体の新たな構成サブユニットとしてycfl2遺伝子の産物であるを見出し,Psb30と名付けた。当該遺伝子は光合成生物に広く保存されているが,被子植物には存在しない。多数の光捕集色素タンパク質を結合した被子植物の系II複合体には不要となったタンパク質であることから,ラン色細菌などの系II複合体の構築過程やストレス環境下での構造安定性への寄与が示唆される。 また,より身近な真核光合成生物における光化学系のライフサイクルを解明するとともに,分解能のより高い結晶を目指して,紅藻や珪藻類を材料にして系I・II複合体の精製に取り組んだ。珪藻類は,地球上の年間の光合成量の20-25%程度を担うほどの重要な光合成生物であるが,その堅い殻のために生化学的研究は少なかった。本研究では,珪藻から活性の高い系I・II複合体を精製する方法を見出し,珪藻の光化学系の特徴を明らかにすることができた。また,原始紅藻から活性の高い健全な系I・II複合体を精製することができた。その結果,系IIはラン色細菌型であったが,系Iは高等植物に似た組成であり,光合成生物の進化の比較的早い段階の性質を残していた。 本研究により,地球環境にとっても重要な生物である珪藻類,光合成生物の進化の過程を示す原始紅藻や,葉緑体の祖先とされるラン色細菌の系I・II複合体が,それぞれどのようなサブユニットが集合して構築されるのかが明らかになったことは,光合成生物の多様性,それから膜タンパク質複合体の離合集散の過程の理解に寄与するものである。
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