Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
黒体放射は蹴子力学の切っ掛けの一つとなった非常に重要な現象である。理想的な黒体は、空洞の3次元性を維持するため、鏡面研磨された球形の空洞に小さな穴を開けた構造となっており、3次元の空間モード中に光エネルギーが分配されるモデルで良く知られたボルツマンの黒体放射則が導かれる。従って、光の空間モードの次元性が異なる場合、放射則も変形することが予想される。本研究代表者は光ファイバー中の空間モードが半径方向に制限されていることに注目し、低次元構造の黒体放射源として理想的であると考え、光ファイバーからの黒体放射のスペクトル、並びに放射空間モードについて調べた。その結果、単一モード光ファイバーからの黒体放射のスペクトルは、3次元物体からの放射と比較して、強度ピークの波長が長波長側にシフトしていることが分かった。また、短波長側にある複数の高次モードを観測した場合、放射空間モードがドーナッツ状をしており、その光強度はモード数にほぼ比例して増強していることが分かった。これらの結果は、黒体放射も光ファイバーの構造によるモード制限を受けており、黒体放射がそれらのモードにほぼ均等に分配されていることを示している。理論的な検討では、空間モード密度を3次元から1次元に換えて放射スペクトルを計算した。その結果、スペクトルピークが長波長側にシフトすることが説明できた。この計算結果は実験結果と定性的に一致している。しかし、波長2ミクロン以上におけるスペクトル測定精度を高めることが出来なかったため、スペクトル形状の定量的な議論に至らなかった。今後、測定精度を高めると共に、石英ガラスの放射率の影響、各モードへの分配強度についても検討し、定量的な議論を行う予定である。