Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
平成19年度は平成18年度に引き続き関連文献の収集、司法関係者への聞き取り調査を実施した。Science、Technology and Human Values、Bulletin of Science、Technology and Society、Social Studies of Science、Public Understanding of Science、Science、Technology and Societyの5誌についてScienceとLawをキーワードにし、関連文献を蒐集した。近年、進化論論争、指紋鑑定の信憑性等に関連し、外国の法廷では科学論に依拠した証言がなされ、学術的にも注目を集めつつあるように思われた。日本においても司法関係者が科学論を題材とした研修を実施するなど、その問題性の認識が顕在化しつつあることが分かった。刑事訴訟では「合理的疑いを超える証明」とは何かが科学観として問題となる。他方民事訴訟では東大病院ルンバール過失事件上告審判決(昭50年10月24日最高裁第二小法廷)において自然科学的証明とは一点の疑義も許されない証明であるとされ、「訴訟上の因果関係の立証」は「通常人が疑いを差し挾まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである」とした。司法ではこの高度の蓋然性が問題とされているが、「一点の疑義も許されない自然科学的証明」という点は検討されていないようであった。司法の科学観として「一点の疑義も許されない自然科学的証明」が支配的なものであるとすれば、科学論の視点から問題であることが示唆された。