Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2007: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2006: ¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
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Research Abstract |
本年度は,有機伝導体θ-(BEDT-TTF) 2CsM (SCN) 4 (M=Co, Zn)の巨大非線形伝導と電荷秩序の局所構造との関係を精密構造解析によって明らかにした。この物質は,3桁におよぶ巨大な非線形伝導と,ダイオードを2個連結したサイリスタ素子と同じ電流-電圧特性を示すため,我々は有機サイリスタと呼んだ(Nature 437 (2005) 522)。これは本質的な電流によって引き起こされた,非平衡現象であるとともに,全く新しいデバイス物理の芽を提案している。 有機サイリスタ結晶にパルス電流を通電しつつ,ミリ秒オーダーの時間分解X線回折を行い,電荷秩序融解のダイナミクスを明らかにすることを試みた。この結果電荷秩序の融解は約50msec,再凍結は100msec以上で起こっており,これは有機サイリスタとしての発振周波数40Hzと整合する。またこの系の場合はBEDT-TTF分子がわずかに回転することによってクーロン斥力を減らそうとする(J. Phys. Soc. Jpn. 74 (2005) 2011)。したがって,電荷秩序が融解すれば分子の回転ももとに戻るはずである。このような電流-格子結合が実際にこの系で観測された。ブラッグ反射の電流依存性を詳細に測定することによって,格子は電流に比例して変化することがわかった。格子の変形は数mA(1V以下の電圧)で0.01%に達する。このときピエゾ定数(歪み量を電圧で割った量)は圧電材料PZTの1000倍以上に達する。この効果は電流によって電荷秩序が融解する効果であるから,歪みは電流の向きによらない。
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