Budget Amount *help |
¥3,200,000 (Direct Cost: ¥3,200,000)
Fiscal Year 2006: ¥3,200,000 (Direct Cost: ¥3,200,000)
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Research Abstract |
物体には鏡像関係にあり,互いに重ね合わすことができないものが存在する.右手と左手はその一例で,キラルな物体あるいは対掌体,鏡像異性体と呼ばれる.鏡像異性体は,それぞれ単独に存在する時には物理的、化学的性質に差はないが,生体系は基本的に不斉環境にあるため鏡像異性体間で生理活性が異なる場合が多く,医薬品,食品などではこの区別,識別は大変重要である.本研究では,最近,考案・開発したナノ結晶にも応用できる結晶のキラリティー識別のための電子回折法を拡張,発展させて,分子のキラリティー識別を可能にする新規な方法の開発の可能性を検証した.第1ボルン近似を使ったマルチスライス法のアルゴリズムにより回折図形の計算を行った.分子における並進対称性の欠如のため,各スライス毎に回折角に関するピクセルを切って連続的な波数ベクトルにっいてマルチスライス計算を行った.分子には座標軸の取り方に任意性があるが,点群C_<2n>に属するシスチン(C_2対称),DMP323化合物(C_2対称),BphC酵素(C_4対称)で最も対称性の高いC_n軸である2回軸をz軸として取ると,電子線の入射方向をz軸に垂直にセットすれば,振幅は等しく位相が異なる分子構造因子を持つ回折線が非対称に現れ,右手系分子と左手系分子で強度の非対称性が反対称となるため,分子のキラリティー識別が可能であることが分かった.分子としてキラリティーを持ちうる10点群のうち,8点群は2回軸を持つため,同様に2回軸に垂直に電子線を入射させれば,強度の非対称性から分子のキラリティー識別が可能であることが分かった.2回軸を持たない点群C_1,C<2n+1>に属する分子では,本方法でのキラリティー識別は困難である.
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