Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
空間分解能40μm、温度誤差0.1℃で温度予測が可能な測定システムを開発した。システムは、近赤外用生物顕微鏡と2台の分光器で構成され、試料内の異なる2点の透過光スペクトルを同時に時間分解能5 msで測定できる。2つの透過光スペクトルは共通の光源および光学系を経ているため、共通影響因子、例えば光源強度のゆらぎ、ガラス表面の反射、温熱環境変化に伴う試料全体の温度変動などによるスペクトル変化をキャンセルすることができた。このような空間温度差の検出は将来的な温度イメージングの可能性も示唆した。精度検証後に培養細胞測定を行った。先ず、細胞を顕微鏡下で長時間維持し、測定に適した50umの厚さに試料を調整できる試料容器を開発した。細胞培養された一般的な60mm径のdishをそのまま測定に使用できるよう工夫されている。測定対象としては、特異的な発熱反応を示す褐色脂肪細胞を用いた。測定スペクトルから温度依存性を示す1908nmの吸収係数を等吸収点補正により求めることで、外乱成分を除去し、時間的に安定したデータを取得することを確かめた。細胞発熱の無い状態での温度較正実験により単回帰係数(温度係数)として0.74×10^3℃/Absが得られた。この場合、温度以外の変動成分はなかったため、主成分回帰分析を適用しても予測誤差は同程度であった。次に、褐色脂肪細胞の発熱を誘起させるノルアドレナリンを投与した場合のスペクトルデータを収集し、その解析を行った。ノルアドレナリンの影響と思われる光量変化が観測された。ただし、細胞の温度変化に起因したものかは現段階では結論付けられなかった。
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