Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
リガンド依存性転写因子である核内受容体は、標的遺伝子プロモーター上のホルモン応答配列に結合して作用する転写促進作用に加えて、トランスリプレッションと呼ばれるリガンド依存性な転写抑制作用を有している事が明らかになってきている。トランスリプレッションは、マクロファージに代表される炎症性変化、自然免疫と密接に関わり、サイトカインや外来刺激に反応した炎症性応答遺伝子群の発現をリガンド依存的に抑制する現象として知られており、これまでにその作用機構、核内受容体の特異性に関する研究を行ってきている。本課題では、炎症性変化やトランスリプレッションにおける加齢性変化について検討を行っており、本年度は昨年度に引き続き老化モデルマウスおよび野生型マウス(対照群)由来のマクロファージ初代培養細胞系を樹立し、炎症性応答遺伝子、Toll-like receptors (TLRs)、核内受容体などの外来刺激存在下、非存在下での発現機能解析を行った。TLRや核内受容体の一部については、加齢性変化としてmRNAレベルでの発現上昇を認めるとともに、TLR4リガンドであるlipopolysaccharide(LPS)刺激により、より顕著な加齢に伴う発現低下傾向を呈した。老化モデルマウス由来マクロファージでは、炎症性応答遺伝子群の一部に対照群に比べてより高い発現が示唆される結果が得られたことなどもあわせ、TLRリガンドによる炎症性応答遺伝子の発現誘導、ならびに核内受容体を介したトランスリプレッションにおいて加齢性変化が存在する可能性が示された。