Budget Amount *help |
¥27,950,000 (Direct Cost: ¥21,500,000、Indirect Cost: ¥6,450,000)
Fiscal Year 2007: ¥8,840,000 (Direct Cost: ¥6,800,000、Indirect Cost: ¥2,040,000)
Fiscal Year 2006: ¥19,110,000 (Direct Cost: ¥14,700,000、Indirect Cost: ¥4,410,000)
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Research Abstract |
本研究は、胃粘膜に持続感染を引き起こすヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori, Hp)による炎症惹起とガン化促進に至るメカニズムの解明を目指して遂行し、以下の成果を得た。 1.マクロ的解析:Hpが生体内で直接相互作用する宿主側細胞を解析した結果、Hpの多くは胃上皮細胞上に付着する一方で、腸管内抗原取込器官であるパイエル板(PP)に菌体が取込まれることを明らかにした。胃炎の発症には、PPを介して感作された、Hp抗原特異的CD4陽性T細胞の誘導と、胃上皮のHp定着が必要であることを報告した(Nagai, S., Mimuro, H., et. al.,2007, PNAS)。2.上皮細胞を中心とした解析:Hpが上皮細胞に感染すると、Hp CagAタンパク質の細胞内移行によるMEK/ERK経路活性化に伴い、BCL2ファミリータンパク質の一つであるMCL1タンパク質の発現が上昇し、その結果、ミトコンドリア経由のアポトーシスが抑制されることが明らかとなった。感染モデル動物であるスナネズミでは、ヒトと同様に胃腺窩上皮細胞のアポトーシスによる迅速なターンオーバーが繰り返されているが、Hp感染動物にアポトーシス誘導剤エトポシドを経口投与すると、CagA陽性Hp感染動物では、胃腺窩のアポトーシス誘導が抑制された。また、感染スナネズミでは、CagAに依存して、表層上皮細胞でのリン酸化ERKとMCL1の発現上昇、胃小窩の肥厚、および定着菌数の増大が観察された。従って、感染によるCagAの細胞内導入によって、MCL1発現亢進による抗アポトーシス活性が上昇し、アポトーシスによる表層腺窩上皮細胞の脱落が抑制され、結果として胃小窩の肥厚と菌定着の増大を誘導することが示唆された(Mimur, H., et. al., 2007, cell Host & Microbe)。3.マクロファージ(Mφ)・樹状細胞(DC)を中心とした解析:Hp感染による炎症惹起に重要である炎症性サイトカインIL-8/MIP2産生は、感染初期のIL-1産生亢進に依存することが明らかとなった(論文投稿準備中)。一方、PPにおいては、上述の胃炎発症に重要なHp抗原特異的T細胞の惹起に先立ち、PP内部で、菌体がDCに取込まれることを示した(Nagai,S., Mimuro, H., et. al., 2007, PNAS)。 これらの結果から、Hpの胃粘膜長期定着の確立には、CagAによる胃上皮細胞アポトーシスの抑制が重要であること、また、胃炎惹起には、胃内MφのIL-1依存的炎症性サイトカイン産生促進と、腸管内PPでのDCを介したHp特異的T細胞の誘導が重要であることが明らかとなった。
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