Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
昨年度確立したマウス脳微小循環モデルを用いて、白血球が脳虚血後の神経傷害を惹起するメカニズムの解明を行った。まず、セレクチンファミリーのligandである修飾糖鎖を合成するα(1,3)fucosy1-transferase IVおよびVIIのdouble knockout mouse(このマウスではselectin-dependentなrollingがまったくおこらない)を入手し、これにfilament法を用いて中大脳動脈閉塞を60分間行い、再開通後5時間後に、脳表面のpial venule上での白血球一内皮細胞間の相互作用を観察した。ノックアウトマウスでは、白血球のrollingが有意に減少したが、adgesionの数はwild typeと変わらず、24時間後の脳梗塞体積や神経症状もwild typeとの間に差を認めなかった。次に、ICAM-1ノックアウトマウスを用いて同様の検討を行った。ICAM-1ノックアウトマウスでは、脳虚血一再灌流後の白血球のadhesionがwild typeと比較して有意に減少しており、24時間後の脳梗塞体積の縮小や神経症状の軽減が認められた。以上より、脳虚血一再灌流後の神経細胞傷害においては、selectinを介した白血球rollingは大きな役割を果たしておらず、ICAM-1を介した白血球接着が大きな意味を持つことが示唆された。以上2つの研究成果は、近日中に論文として投稿予定である。また、近年脂肪代謝を司るadiponectinの低下が脳虚血後の神経傷害を悪化させるという報告が、当研究室の西村らから発表されたが、我々はadiponectinのノックアウトマウスで脳微小循環を観察し、wild typeと比較して有意に白血球の接着が増加していることを見出した。adiponectinの脳保護作用の一因として、白血球-内皮細胞相互作用を抑制するというメカニズムがあることが示唆された。