Research Abstract |
高齢者の介護予防が求められ,転倒予防が柱の1つである.転倒予防には,下肢筋力が重要だが,地域で利用でき,定量的かつ簡便に評価できる機器や指標は開発されていない.本研究では,臀部,大腿部に着目し,特に日常生活動作に関連の深い股関節内転筋力を計測・評価するための定量的かつ簡便な機器開発を目的とした.本研究で開発した膝間力計測器は持ち運びが可能であり,座位で計測を行え,計測中の転倒リスクがなく,身体機能の低下した虚弱高齢者でも安全に利用可能である.研究期間は2年間であり,次の4つの項目について検討した. 1. 膝間力の電気生理学的意義の検証:筋電図により大腿直筋や縫工筋,薄筋等の活動が確認され,膝間力の運動時の解剖学的,電気生理学的意義が確認できた. 2. 幅広い世代の膝間力の計測:248名(平均年齢41.7±25.0歳,4〜95歳)の対象者について,年代ごとに股関節内転筋力を調べ,その分布について明らかにし,加齢,成長曲線を得た. 3. 高齢者の転倒リスク評価指標の構築:高齢女性50名(要介護高齢者18名,特定高齢者10名,健常高齢者22名)を対象に,転倒リスク群と非リスク群に分け,膝間力,足指力,重心動揺を計測し,それぞれの計測値から統計学的に有意な転倒リスク値を算出した.膝間力の転倒リスク値は10kgfであり,それ以下になると転倒リスクが高まることが明らかになった. 4. 特定高齢者の身体機能向上のための介入研究:特定高齢者22名に対し,筋力向上と足部ケアの介入を3ケ月間行い,介入前後の膝間力を計測し,介入効果を評価した.その結果,対象者にばらつきがあるが,膝間力が向上するとともに,歩行機能も向上することが示唆され,介入効果および膝間力計測の有効性が確認された. 以上の結果より,膝間力の転倒リスクの定量的評価の有効性と地域での介入現場の有用性等の観点から本計測装置の効果が確認できた.
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