Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
1.前年度に実施した所在調査アンケート、および新たな情報提供により、所蔵が確認できた機関等において調査をおこなった。調査は、作品を所蔵する所蔵機関、個人所蔵家などに研究代表者が直接赴き、作品を熟覧し、調書を作成し、デジタルカメラによる写真撮影をおこなうという手順で実施した。なお本年度は、宮内庁三の丸尚蔵館・泉屋博古館分館(東京都)、北村美術館・野村美術館(京都府)、大阪歴史博物館・大阪市立美術館(大阪府)、個人所蔵家(東京都、京都府、大阪府、和歌山県等)等における調査を実施した。2.1で得た調査データを、前年度に作成したデータベーズに加え、デジタル情報の拡充を図った。なお、データベースソフトはFileMaker Pro 8を使用した。3.データベースの作成により、作品や付属資料等を効率良く比較検討できるようになった。その結果、近代の象彦製漆芸品を、作風や箱書の署名・印章などから、象彦の何代目の時代に制作されたものであるかほぼ把握できるようになった。とくに八代象彦の時代に質、量ともに優れた作品が生み出されたこと、またその器形も従来の伝統的な漆芸品の枠にとどまらない、蒔絵額や棚、置物など新時代のニーズに合わせたものが認められ、さらに宮家や三井家など財閥家からの受注の実態も確認できた。4.博覧会・展覧会の出品記録や、同時代の美術雑誌、団体誌における象彦関連記事の調査から、農商務省系展覧会を中心とする象彦の積極的な出品活動を確認した。