減損会計基準の適用における利益マネジメントに関する実証研究
Project/Area Number |
18730290
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Accounting
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
榎本 正博 Tohoku University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (70313921)
|
Project Period (FY) |
2006 – 2007
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2007)
|
Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2007: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
|
Keywords | 利益マネジメント / 早期適用 / 減損会計 |
Research Abstract |
当該年度に行った研究は次の通りである。 (1)減損会計基準の適用前後の利益マネジメントの特徴の相違について分析するために,強制適用後のデータを加えた。分析の結果,強制適用企業では早期適用企業から引き続きビッグ・バスとみられる会計行動が観察された。しかし利益平準化については,早期適用企業な先行研究と同様に観察されたものの,強制適用企業ではみられなかった。よって,強制適用期には利益マネジメントの傾向は弱くなっていることが示唆される。一方で,強制適用時に減損損失の計上に対して経済的要因の影響が強くなる証拠は得られなかった。一連の分析結果の意義は,適用時期に幅を持たせた政策的配慮が,早期適用企業に,より利益マネジメントの手段として用いられた証拠を提示していることにある。つまり,会計基準の設定にあたり適用時期の選択を企業に与えると,新基準によって影響を受ける企業がその選択を利益マネジメントの一つの手段として利用する傾向にあるのである。このことを会計制度の設計に当たっては含意すべきである,という結果を提示したことに本研究の重要性があろう。 (2)減損会計基準の適用に対する事前対応を考察した。財務データから把握が可能である有形固定資産の売却損益に的を絞って分析を行った。すると,多額の減損損失を計上した企業ほど,事前の有形固定資産の売却行動を行っていたことがわかった。これは会計基準公表時から指摘されていた,含み損をかかえた資産の売却を進めて減損損失を減らすという事前対応が功を奏していると解釈できる結果といえる。つまり,新会計基準を適用するまでの準備期間を与えると企業は新会計基準のショックを和らげる行動をとるという逸話的証拠に対し,統計的な裏付けを与えた。 上記(1),(2)をディスカッションペーパー「会計基準の適用時期の選択と利益マネジメント-減損会計基準の導入にあたって-」TM & ARG Discussion Papers No.80,(2007年11月)で公表した。また主として(1)に関する内容を,『会計プログレス』第9号に投稿した。この論文は,掲載候補扱となっており,本報告書執筆現在で継続審査中である。
|
Report
(2 results)
Research Products
(3 results)