Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2007: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2006: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Research Abstract |
高次元複素力学系は,実力学系の問題を複素化して解決を図ること,また,高次元複素力学系独自の現象を定式化すること等を目標に活発に研究されている.複素2次元射影空間上の有理写像による力学系はこれらの目標の解決に最も適切な研究対象の一つである.これまでに有理写像の不連続点である不定点での力学系の研究は,Y.YamagishiやT.C.Dinhなどにより行われてきた.彼らはカントール集合と同濃度の個数の安定多様体(軌道が不定点に収束する点からなる集合)からなる不変曲線の族が不定点に存在する写像を定式化し,不定点にカオス現象を起こす不変集合が存在することを指摘した. 一方,私は平成18年度までに,有理写像の不定点に存在する不変曲線族を,代数幾何の手法であるblow upを用いて定義する方法を考案した.この方法により,不定点に存在する不変曲線として,安定多様体だけでなく,不安定多様体(軌道が不定点から離れていく点からなる集合)や中心多様体も扱うことができるようになった.また,不安定多様体からなる不変曲線族を持つ有理写像を具体的に構成した. 平成19年度はこの方法と実力学系の双曲型力学系の理論用いて,中心多様体からなる不変曲線の族を持つ有理写像を具体的に構成した.また中心多様体を定義する関数の漸近展開を求め,滑らかさの評価を行った.中心多様体は古くから研究されている重要な対象であるが,多変数複素力学系においては自明なもの以外に知られていなかった.今回の結果より,写像の不連続点の近傍に複雑で豊富な力学系構造が存在することを示すことができた.次年度以降もこの方法を応用し,特に現時点ではほとんど研究が進んでいない3次元以上の射影空間上の有理写像の力学系構造の研究を行いたい.
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