Budget Amount *help |
¥3,600,000 (Direct Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2007: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2006: ¥2,900,000 (Direct Cost: ¥2,900,000)
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Research Abstract |
本研究課題では,光照射下でナノ物質に印加される光誘起力を通じてナノ物質中量子状態を観測する力学的顕微分光の原理を理論的手法によって探った。最終年度は,これまでに構築した光誘起力の計算手法を用い,具体的なモデル計算により光誘起力顕微分光の可能性を示した。主な成果を以下に述べる。 1.量子ドット配列構造を試料とみなし,試料とは異なる光学特性を有するナノ微粒子を探針とみなしたモデル計算を行った。試料を光励起し,探針を試料直上で走査しながら印加される光誘起力を測定すれば,選択励起された試料中集団励起状態の波動関数の空間分布を観測できる可能性があることを解明した。本原理はナノ材料の量子力学的特性評価における新しい選択肢を与えるものである。 2.カーボンナノチューブや非対称な構造の有機高分子に共鳴光を照射した場合に生じる輻射力が有意な値を持ち,かつ選択的に印加され得ることを明らかにした。得られた結果はカーボンナノチューブや有機ナノ材料を対象とした光誘起力顕微分光に繋がる重要な知見を与えるものである。 3.ナノ物質中の電子系に共鳴するラゲールガウスビームをナノ物質に照射すれば,選択的に軌道角運動量を転写して回転運動を制御できる可能性があることを示した。また,励起光の偏光と物質の対称性により選択的に輻射力を印加できることも示した。これらの結果は,光源の条件により光誘起力の性質を変化させて,多角的にナノ試料中励起状態の情報を抽出できる可能性を示唆するものである。 4.金属コートされたプローブと半導体薄膜が付されたカンチレバーが光共振器を形成する場合を想定し,カンチレバーの運動制御可能性を探った。光共振器によって増幅された輻射力により,運動制御に十分なカンチレバーの共振周波数の変調が得られる可能性を示唆した。この機構は,力学的顕微分光における検出感度向上などにも繋がると期待される。
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