Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ヤマトタマムシの翅鞘の表層には、屈折率の異なる二種類の層が交互に積み重なり、多層構造を形成している。それらの一層分の厚さは、およそ光の波長の数分の1程度で、層の境界面で反射された光が、多層膜干渉を起こして着色している考えられている。しかし、タマムシの角度変化を観察すると、通常"玉虫色"と呼ばれる単純な角度変化とは必ずしも一致しない。というのは、緑色が見える度合いが強く、角度をつけて観察したときの青色は、弱くしか見えないからである。本研究の目的はタマムシの鞘翅の内部にある緑色を強調する物理的な機構を明らかにすることにある。これまでの研究の結果、高い屈折率を持つ層には屈折率の虚部が存在すること、すなわち光の吸収が存在し、さらには波長分散があることが明らかになった。しかし、その分散曲線を決定することは、多層膜構造が極めて微小な領域にしか存在しないために困難であった。そこで、今年度は顕微分光法を用いて、切片の多層膜部分のみに対して透過率測定を行い、屈折率の波長分散の決定を行うシステムを開発した。反射型の対物レンズや結像レンズに工夫を施し、微小部位を特定しつつスペクトルを測定し色収差問題の解決を試みた。また、タマムシと同じように多層膜構造を用いた発色現象を示すニシキオオツバメガについての研究を行った。その結果、緑色の部分は高次の光干渉を利用した特異な光学デザインを持つことを見つけた。そのデザインに基づき、膜厚を単調に薄くするだけで、緑、青、赤のように、光の波長順に従わない色変化を生み出していることが明らかになった。
All 2008 2007
All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)
J. R. Soc. Interface 5
Pages: 457-464
Journal of the Physical Society of Japan Vol.76 No. 2
Pages: 13801-13801