Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、有機合成的手法によりカーボンナノチューブの部分構造であるチューブ状多環芳香族炭化水素の一般的合成法を確立し、それらの基礎物性を明らかにすることを目標とする。合成法としてジフェニルチオフェンジオキサイドとベンゼンから構成される環状化合物を用いる合成ルートを検討することにした。環状化合物の前駆体となるジフェニルチオフェンジオキサイドのハロゲン体とフェニルジボロン酸を合成し、Suzukiカップリングにより環状化合物を合成した。反応後、GPCにより分離精製することにより、三量体、四量体、五量体を得ることができた。三量体と置換基(t-ブチル及びドデシル基)をパラ位に有するフェニルアセチレンとのDiels-Alder反応により環状のフェニレン誘導体へと変換した後、塩化鉄(II)を用いる分子内脱水素化反応を行ったところ、黒色の固体を得ることが出来た。得られた黒色固体は、有機溶媒への溶解度が極めて低いため、NMR等による構造決定をすることができなかった。今後は、より嵩高い置換基を導入し、溶解性を向上させ、生成物の構造決定を行う予定である。