Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Research Abstract |
近年,我が国周辺海域では,マイワシが資源崩壊の危機にある一方,カタクチイワシは資源増大期にある。この「魚種交替」現象は気候変動と対応してきたが,生物過程には未知の部分が多い。魚種特有の適水温特性に着目した過去研究の結果,最近年のマイワシ資源の低迷等を説明するため,種間相互作用の影響を解明する必要が生じた。本研究課題では,魚種交替生物過程における魚種間相互作用の役割を理解するため,カタクチイワシとマイワシの産卵の時空間的重複を定性的かつ定量的に推定し,時空間的重複が初期生残に及ぼす影響を調べた。 1978〜2004年に我が国太平洋岸で実施された卵稚仔調査の長期蓄積データを緯経度15'×15'格子で整理し,カタクチイワシとマイワシの月別産卵量を算出した。卵の出現有無及び他方の卵との重複度によって分けた各カテゴリに対して産卵場面積及び産卵量の総和を求め,重複産卵場面積及びそこでの産卵量が全体に占める割合を調べた。両魚種の産卵場は主に2〜6月に沿岸域で重複していた。重複産卵場面積及び重複産卵量が全体に占める割合は,カタクチイワシでは資源水準にかかわらず低かったが(6〜31%及び7〜40%),マイワシでは資源減少に伴って急増していた(21〜81%及び1〜87%),特に最近年(2000〜2004年)の平均では,マイワシ産卵場面積の68%が重複産卵場,年間産卵量の52%が重複産卵場における産卵であった。もし艀化後に直接的競合が起これば,マイワシ資源回復に不利に作用する一要因となり得ると考えられる。 緯経度15'×15'格子での産卵量と仔魚採集量の比を生残成功度の指標として,他方魚種との重複度との関係を調べた結果,他方魚種と重複していない場所で高い生残成功度指標値が頻出した。発育段階別に比較した結果,卵・仔魚が出現した格子のうち,他方魚種と重複分布する場所の割合は,卵期,前期仔魚期,後期仔魚期と発育段階に伴って減少しており,発育に伴う群れ分散あるいは少数派の壊滅の可能性が示唆された。以上より,北西太平洋では,産卵重複は,特に資源低水準期のマイワシに対して負の影響が大きいと考えられる。
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