Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
申請者はこれまで、リンゴプロシアニジン(ACT)の経口摂取が、炎症性腸疾患の発症に対して予防効果を示すことを明らかとしてきた。昨年度は、ACTがデキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎モデルだけでなく、潰瘍性大腸炎のモデルマウスであるオキサゾロン誘発大腸炎モデルマウスに対しても、体重減少抑制・組織学的所見による病態改善など、顕著な大腸炎発症予防効果を示すことを見出した。本年度は、(1)オキサゾロン誘発大腸炎モデルマウスにおける予防効果のメカニズム、(2)ACTの腸管上皮間リンパ球に及ぼす影響、(3)ACTの炎症性サイトカイン産生抑制メカニズム、に関して検討した。オキサゾロン誘発大腸炎モデルマウスでは、粘膜固有層リンパ球において、IL-4、IL-5、IL-13といったTh2型サイトカインが過剰産生されていた。一方、ACT投与群では、これらの産生が有意に抑制されており、その結果、病態改善につながったと考えられた。昨年度の解析において、ACT投与時に腸管上皮間リンパ球のγδT細胞組成比が上昇することを見出した。そこで、ACT投与時の腸管上皮間リンパ球の機能変化に関して、サイトカイン産生能を評価した。その結果、ACTは腸管上皮間リンパ球刺激時に、IFNγ産生を有意に抑制することが明らかとなった。即ち、ACTは腸管上皮間リンパ球のγδT細胞組成比を変化させることで、炎症性サイトカイン産生を抑制することが示唆された。更に、ACTが転写因子NF-kBの活性化を抑制することで、腸管上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生を抑制することを明らかとした。