Budget Amount *help |
¥3,500,000 (Direct Cost: ¥3,500,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2006: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
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Research Abstract |
申請者は,ラットの鋤鼻系をモデルとして,末梢感覚細胞と中枢標的神経細胞の反応を同時に同一空間で解析できるバイオイメージングシステムを開発し,生体から分離した組織・細胞の刺激応答を可視化して評価することを目的とした。平成18年度には,雄ラット鋤鼻感覚細胞の雌ラット尿刺激応答特性を検討するためのカルシウムイメージングと,ラット胎児由来の鋤鼻感覚細胞・副嗅球神経細胞の初代培養系確立を計画した。平成19年度には,初代培養系を用いたカルシウムイメージングと雄ラット鋤鼻感覚細胞に刺激応答を引き起こす雌ラット尿中生理活性物質の同定を計画した。雄ラット鋤鼻感覚細胞は,雌ラットから採取した発情前期尿・発情休止期尿両方に様々なパターンの反応を示したが,発情前期尿に対して多くの細胞が強く反応し,発情前期尿に対して強く反応する細胞は,鋤鼻器全体の中央から吻側寄りに多く分布することが示された。つまり,雄ラット鋤鼻感覚細胞の応答の多様性・独立性,および感覚細胞の鋤鼻器内機能的分布が明らかとなった。15日齢のラット胎児(E15)から採取した鋤鼻器細胞の初代培養系は,分離後1ケ月以上の培養に成功し,後に蛍光免疫染色にて感覚細胞を同定することができた。一方,副嗅球神経細胞の初代培養系の確立は非常に困難であり,共培養には至らなかった。鋤鼻感覚細胞初代培養系を雌ラット尿で刺激すると,感覚細胞と思われる細胞体のCa^<2+>上昇が認められ,刺激分子(リガンド)に対する受容体を発現するまでに成熟している可能性が見いだされた。また,鋤鼻感覚細胞に異なる刺激応答を引き起こす発情前期尿と発情休止期尿をタンパク・ペプチド分析装置で分析・比較したところ,ペプチドと思われる分子量のピークの大きさに違いが認められた。つまり雌ラット尿はその刺激の強さや含有ペプチド量などにおいて雌体内の内分泌動態を反映することが示唆された。 本研究では,細胞内Ca^<2+>濃度上昇を指標として,鋤鼻感覚細胞の反応特性と尿の刺激特性を解析することができた。これはchemical communicationに関わるdonorとrecipient両方の知見を得る上で非常に意義深く,有用な手法であると言える。また本研究の手法を使用することで,新規フェロモン候補物質の同定やリガンド-受容体のカップリングにも応用できるため,発展性の高い研究として重要な位置にあると思われる。
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