Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成19年度は、前年度から引き続き正常ヒト表皮角化細胞を用いて、マスタードガスによる細胞への影響を分子生物学的手法と細胞化学的手法により解析を試みた。また、真皮成分を産生する細胞である正常ヒト皮膚線維芽細胞、および肺組織由来の細胞である正常ヒト肺毛細血管内皮細胞についても同様に解析を試みた。通常の継代後、80%程度にコンフルエントになった状態の細胞を、100μMから800μM程度の濃度になるようにマスタードガスを希釈した培地および通常の培地に培地交換することでマスタードガスに曝露し、30分間室温でドラフトに放置したのちにCO_2インキュベーターで5%CO_2、37℃で24時間程度培養した。培地除去後、冷却したPBS(-)で数回洗浄し、全RNAの抽出を行うものと、細胞の生死判定を行うものとに分けて処理を行った。細胞の生死判定は細胞をトリプシンで遊離させた後に培地に再懸濁し、トリパンブルーで染色して細胞を計数することで行った。その結果、同程度の濃度の曝露でも、肺毛細血管内皮細胞、皮膚線維芽細胞、表皮角化細胞の順番で死細胞が多く、影響が重篤であることが分かった。なお、ミトコンドリアの酵素活性を指標とするMTTアッセイを用いた細胞の生死判定も試みているが、同様の結果が得られている。なお、現在は抽出した全RNAを用いてFDDによる遺伝子発現プロファイルの変動を解析し、それぞれの細胞においてマスタードガスへの暴露により発現が顕著に影響を受ける遺伝子のスクリーニング、および細胞間におけるそれらの遺伝子の差異の解析を検討しているところである。