Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
現在、肝硬変自体の進行を抑え、さらに改善させていくための治療戦略の構築が急務となっている。近年、DDS (Drug Delivery System)の発展に伴い、癌組織などに対してナノ粒子を用いた標的DDSが有用であることが明らかにされた。本研究ではその標的DDSを応用し、肝硬変に対する肝特異的・標的DDSを用いた診断・治療システムを開発することを目的とした。特に、本年度は標的DDSにより、肝臓を標的とした新規機能化MRI造影剤を構築し、標的DDSによる肝硬変診断システムの開発を行った。まず、Active targeting DDSによる肝特異的機能化MRI造影剤を構築した。哺乳類の肝細胞表面にはアシアロ糖タンパクに対する受容体が存在し、リガンドであるアシアロ糖タンパクのガラクトース残基を認識して肝細胞に取り込んでいる。そこで、MRI造影剤Gd-DTPAとラクトビオン酸を縮合反応によってコンジュゲートし、肝細胞特異的な標的DDSによる新規機能化造影剤を構築した。次に、その新規肝特異的機能化造影剤の検証を、動物モデルを用いて行った。MRIは九州大学内に設置してある動物実験用Open MRI(Hitachi : AIRIS II)を使用し、正常ラットを用いて新規造影剤の造影効果を判定した。正常ラットに同造影剤を投与したところ、ラット肝ではアシアロ糖タンパクが発現しているため、肝臓のみに造影効果が得られることができた。今後は、様々な肝機能低下を呈する肝硬変モデルで、新規機能化造影剤を用いてその造影効果を確認し、それぞれの肝機能との相関を検討する。肝機能の低下に伴い、造影効果が減少すれば、肝特異的機能化造影剤の有効性、妥当性は証明できることになる。さらに、その造影効果を定量化することで、肝予備能を反映する新たな指標を構築していく予定である。