Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ラット腎炎モデルにおけるマイクロアレイを用いた網羅的スクリーニングにより慢性腎不全に至る過程で腎線維化に伴い発現上昇する遺伝子群をスクリーニングした。この検討で得られたサイモシンβ4の発現は腎障害の程度と強く相関し、主に間質線維化の強い部位と一致した。免疫組織学的検討でサイモシンβ4は間質のED-1陽性細胞、すなわちマクロファージに発現することが明らかになった。マクロファージと腎臓の線維化に関連する知見として、間質へのマクロファージの浸潤が糸球体病変や間質の線維化の進展に重要な役割を担うことが示唆されている。そこで我々は活性化マクロファージにおけるサイモシンβ4の発現を検討する目的でin vitroの系を用いてヒト単球培養細胞を用いてINF-γ、LPS、TNF-α、PMAなどマクロファージを活性化することが知られるサイトカインで刺激し、活性化マクロファージにおけるサイモシンβ4の発現をリアルタイムPCR法で検討した。その結果、マクロファージの活性化に伴いサイモシンβ4の発現上昇を認め、その傾向はPMA刺激によって最も強く認められることが明らかになった。このことからサイモシンβ4が活性化マクロファージにおいて強い発現を認め、マクロファージの活性化を介して間質の線維化に重要であることが推察された。サイモシンβ4がマクロファージの重要な機能である遊走能にどのように関連するのか検討する目的でsiRNAを用いた機能阻害の系をたてた。MCP-1は強力に遊走能を上げるがサイモシンβ4のsiRNAで発現を抑制していた場合にどのような影響があるかを検討した。その結果、発現抑制した群ではマクロファージの遊走能が抑制されていて、サイモシンβ4がマクロファージの遊走能に関与することが推察された。今後この結果を直接的に証明するために最終的にin vivoの系を用いた機能阻害実験が必要であると考えている。