Budget Amount *help |
¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
Fiscal Year 2007: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
多発性硬化症(MS)においては,通常のMRIでは異常所見を認めないnormal-appearing brain tissue(NABT)の障害がMS患者の運動障害や高次機能障害に影響する可能性が高いと考えられており,NABT障害の評価法のひとつとしてMRI拡散テンソルイメージング(diffusion tensor imaging:DTI)が近年注目されている。DTIを用いたNABT障害の評価法としては,関心領域(ROI)を設定した解析や,NABT全体,あるいはNABTを分離した皮質・白質全体を対象としたヒストグラム解析などが試みられているが,これらの手法では,皮質・白質よりもさらに詳細な解剖学的構造ごとの解析は困難であった。 今回われわれは,DTIによって得られたデータを解析する新しいアルゴリズムであるラムダ・チャート解析を用いてNABTを1)Iso-1:主に小型ニューロンとグリア細胞からなるcomponent,2)Iso-2:主に大型ニューロンからなめcomponent,3)Aniso-1:主にshort tractを構成する短いaxonからなるcomponent,4)Aniso-2:主にlong tractを構成する長いaxonからなるcomponent5)CSF:脳室や脳槽内の脳脊髄液の5つの解剖学的構造に分離する手法を開発し,この手法を用いて通常型再燃寛解型MS患者14名および正常対照者20名を対象にNABT障害の評価を行った。 CSFを除く4つのcomponentでの比較検討の結果,いずれのcomponentでもMS群において拡散テンソルトレース値の有意な上昇,fractional anisotropy(FA)値の有意な低下が認められた。さらに,皮質下白質に相当するAniso-1 componentの体積がより顕著に減少する一方で,皮質深層の小型ニューロンやグリアに相当するIso-1 componentの体積はむしろ有意に増加していた。これらの結果は,大脳白質においては皮質下白質で軸索消失を中心とする病的変化がより顕著であり,大脳皮質においては皮質深層でのニューロンの変性やグリア細胞の増生がより顕著であることを示唆している。 新しいDTI解析アルゴリズムを用いた今回の細胞レベルでの詳細なMSのNABT解析により,「大脳皮質近傍領域(juxtacortical region)がMSにおいてもっとも侵されやすい部位である」という病理学的事実を,DTIを用いてin vivoで実証することができた。
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