Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成19年度は、対象者(双極性障害患者)のうち24名(約14.5%)にSCID-IVによる構造化面接を行い、臨床診断(DSM-IV)を確定した。操作的診断が確定した症例は、2年間で約半数にとどまった。種々の臨床背景を調査し、気分安定薬や抗うつ薬、その他の治療薬に対する治療反応性も評価した。本研究の対象者は、昨年度と同様に(1)双極2型障害および特定不能の双極性障害の割合が高く、(2)気分安定薬の治療反応性が不良であり、(3)標準的な薬物療法以外にドパミン受容体アゴニストの使用率が高いことが示された。また、ドパミン受容体へ作用する薬剤が、抗うつ薬に比べて難治性症例に対しても比較的有効である可能性が示唆された。双極性障害の病態生理におけるドパミン神経系の関与を想定し、昨年度に続いて、ドパミン関連遺伝子の遺伝子多型(SNPおよびVNTR)と診断および治療反応性の相関を検討した。治療薬の作用機序を考慮してドパミンD2受容体遺伝子(DRD2)およびドパミントランスポーター遺伝子(DAT1)、ドパミンD2受容体との関連が報告されているPAR-4遺伝子(PAWR)を候補遺伝子とした。今年度はサンプル数を増やして再検討したところ、同様にPAWRで双極性障害との有意な相関(p<0.005)を認めた。治療反応性については、サンプル数の問題から十分な検討を行えていないが、ドパミン受容体アゴニストの治療反応性とDRD2に相関傾向を認めている。現時点で網羅的SNP解析を診断や治療反応性など臨床に応用することは困難と思われるが、今後の発展は十分に期待される。現在、有力な疾患関連遺伝子としてPAWRに着目し、未報告の機能的SNPの探索を行っている。