Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
<研究目的>今回の研究では、遺伝子導入により下肢静脈壁において抗血栓因子を持続的に高発現させ、局所での血栓形成を抑制することを検討する。血管壁への遺伝子導入では、局所においてのみ抗血栓効果を有し、その効果は1〜2週間見られるものと予想される。したがって、必要な場所(下肢静脈)、および必要な時(周術期)でのみ効果を発する、非常に有効な手段と考えられる。<研究内容と結果>1、遺伝子組換えベクターの作製Ecto-NTPDaseの発現plasmidおよび組換えアデノウイルスを作製した。遺伝子導入はこの2種類のベクターを用いて行った。2、培養細胞への導入実験作製した遺伝子組換えベクターによる遺伝子導入効率を培養細胞にて検討した。培養細胞に対し、発現plasmidおよび組換えアデノウイルスにて遺伝子を導入した結果、持続的に目的蛋白が発現することを確認し、細胞膜および培養液中での酵素活性の上昇を認めた。3、動物実験モデルの作製、遺伝子導入、評価SDラット(♂、生後8週)の腸骨静脈を露出・結紮した後、下肢静脈末梢より遺伝子組換えベクターを注入し、遺伝子導入を行った。遺伝子導入により目的蛋白の持続的発現を確認した。当初の予定では、この腸骨静脈にレーザー照射により血栓形成を惹起させる計画であったが、十分な血栓が形成されなかった。これは腸骨静脈の内腔容量が血栓形成に十分でないと考えられた。このためラットの下大静脈を結紮することにより、下大静脈に遺伝子導入およびレーザー照射による血栓形成を行うこととした。この結果、血栓形成抑制効果の評価が可能となり、Ecto-NTPDaseによる静脈血栓抑制効果が示唆される結果が得られた。今後この結果を投稿予定である。