Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
角膜上皮の幹細胞は輪部に局在し、この輪部が機能不全となると結膜侵入等により視力が損なわれる。この治療法として、生体外で上皮幹細胞を増殖させて作成した上皮シートを眼表面に移植する培養上皮移植術が開発され、良好な治療成績を収めている。しかし、培養に必須のフィーダー細胞には異種であるマウス繊維芽細胞株3T3が用いられており、潜在的な異種由来感染の危険性は否定できない。そこで本研究ではヒト繊維芽細胞をフィーダー細胞に用いて培養上皮を作成し、その質を検討した。平成18年度でのヒト輪部線維芽細胞に加えて、平成19年度ではより入手しやすいヒト骨髄間葉系幹細胞の有用性を検討した。このフィーダーは上皮の増殖を刺激するHGF、KGF、およびニッチ因子候補N-cadを発現し。低密度でのヒト輪部上皮細胞のコロニー形成を支持できること(1.9%±1.8%、平均±標準偏差、n=3)、角膜上皮特異的分化マーカーK3陽性の重層上皮シートを形成できた。加えて慶應義塾大学医学部の大本雅弘医師と、このフィーダーを用いて作成したウサギ培養上皮シートを輪部機能不全モデルウサギに対して移植した。非移植群では施術4週後に4例全例が結膜化していたのに対し、ヒト骨髄間葉系幹細胞フィーダー共培養上皮移植は3T3フィーダー共培養上皮移植群と同等の割合で完全な角膜上皮化が得られた(6例/10例vs 3例/6例)。これらの結果は、ヒトフィーダー細胞もマウス3T3細胞と同程度に移植用培養上皮の作成に有用であることを示す。